災害時における犬の不安反応とその解消

災害時の犬の不安反応とその解消方法について解説します

Q.犬のしつけには最適な時期があります。それはいつでしょう。

1. ~6か月
2. ~1歳
3. ~2歳
4. 2歳~

3月11日に発生しました「東日本大震災」におきまして、被害にあわれた皆様に心よりお見舞い申し上げるとともに、犠牲になられた方々とご遺族の皆様に対し、深くお悔やみを申し上げます。

災害時犬に何が起きているか

私たちと同じように犬も、地震などの災害を経験することで、不安に襲われたり、気持ちが不安定になることがあります。また、直接災害を経験していなくても、生活パターンが変わったり、人間の様子(声のトーンが変わる、しゃべる量が多くなる、動きが早くなるなど)が変わることで、犬が不安に感じることもあります。

犬における災害時の不安反応

そのようなとき、犬に次のような反応が見られます。

・ちょっとしたもの音や人の動きや、揺れなどに過敏になる
・些細なきっかけで鳴いたり、吠えたり、震え始める(人間にはなぜ吠えたり震えているのかわからないことも多い)
・しきりにだっこをせがんだり、そばにいたがったり、離れることを嫌がる
・おしっこを失敗する
・興奮しやすくなる
・そわそわしたり、その場を逃げ出そうとする

「不安」という情動反応が、どのような行動になって現れるかは犬によって違います。よく動くようになるなど、「不安」とは一見関係なさそうな反応が不安行動であることもあります。「いつもと様子が違う」と感じられたら「犬も不安に感じているのではないだろうか」と注意深く見ていく必要があります。

犬の不安反応を抑制する2つの要因

通常の状態なら一時的に怖い思いをしても、その後生活が元に戻れば(環境が元に戻ったり、人間がいつもどおり接することで)、犬の不安反応も自然と解消されていきます。しかしながら、災害時などにはその「いつもどおり」が当然のことながら難しいため、犬の不安反応も長く続くことになります。しかし、以下のふたつのポイントを抑えた対応で、そのような反応は解消することができます。

1.犬の好きなものを繰り返し与える
2.体を動かさせる

<犬の好きなものを繰り返し与える> 犬には、楽しいことと組み合わせて経験したことを好意的に受け取るようになる学習傾向があります。ゴハンやおやつをまとめてあげるのではなく、ひと粒づつ、あるいは小さく切って繰り返しあげるようにすることで、不安に感じている今の状況に馴れ、不安の解消に役立ちます。

<体を動かさせる> そのときには、それを犬に体を動かしてもらいながら行うことが重要です。たとえば、じっとしている状態でおやつをあげることを繰り返すより、おやつをあなたのところまで取りに来てもらったり、「どこにあるかな」と手の中に隠して探してもらうなど、体を動かさせる方がより早く確実に不安反応を解消することができます。

犬の不安反応を抑制する接し方

上記の2点を兼ね備え、かつ、今からでもすぐにできることとして次のようなものがあります。

・ドックフードやおやつをコロコロと転がして犬に取りに行ってもらう
・ドックフードやおやつを箱やタオルにくるんで、やぶいたり、ほどいて食べれるようにする
・手の中に隠して「どっちに入ってる?」と遊びながらあげる。

言い換えると「食べたり遊んだりすることに忙しい毎日を送らせてあげる」ということになるでしょう。何か心配なことがあるときには、じっとしているより、何かをしていた方が気が紛れ精神的な負担が軽くなるのは、人も犬も同じなのかもしれません。

犬と一緒に乗り越えようという気持ちで

犬は、私たちが考えている以上に環境への順応能力の高いたくましい動物です。「かわいそう」「守ってあげなくちゃ」と思う気持ちはとても素晴らしく大切なものすが、その思いが強すぎると、人間の不安行動が犬の不安を助長したり、長期間に渡ってその思いを抱え続けることが負担になって、飼い主さんの方がつぶれてしまうことになります。

ぜひ「この状況を犬と一緒に乗り越えよう」と考えてみてください。そして「今できることをしてあげよう」とだけ考えましょう。そして何をしてあげればいいのかなと迷ったとき、このページを参考にしてください。あなたの前向きな雰囲気や落ち着いた行動も、犬の不安をやわらげることにつながります。

過去には震災に遭われた方々から、犬は事情を知らない分だけ人間よりも早くその状況になれ、無邪気におもちゃやおやつで遊びたわむれる姿から人間の方が元気をもらったという声も多く聞かれました。今、もし犬を抱えて、先行きわからない不安に押し潰されそうになっていても、どうぞ希望を失わず、がんばりすぎず、今できることをやる、それが必ず前進につながります。

アニマルハートセンター
アニマルハートアドバイザー おだふみこ