クリッカーってなーに?

クリッカーなるものをご存知だろうか。心理学を元とするこのツールは、犬とのコミュニケーションを可能にするという。果たして何ができるのか。犬と人との未来に何が待ち受けているのか。最新の「しつけの科学」をレポートしよう。

Q.あることをすると犬のストレスが減り、しつけにいい影響を及ぼすと言われていることがあります。それは何?

1. 声かけ
2. おやつ
3. マッサージ
4. その他

クリッカーは、行動分析学という心理学の理論を動物のトレーニングに応用するための道具として生まれました。

今や、世界中でたくさんのクリッカー・トレーナーが活躍しています。そして、彼らのもとで指導を受けた幸せな飼い主と犬のペアがたくさん生まれています。まさに、クリッカーは、心理学の理論を応用した最先端の犬のトレーニング技術と言えます。

そのクリッカートレーニングをみなさんにご紹介したいと思います。

クリッカートレーニングをエンジョイされる飼い主さんとわんちゃんのペアが、日本においても一組でも多く生まれることを心から願っています。

クリッカーってなーに?

クリッカーって何ですか?クリッカートレーニングってどんなトレーニングですか?

最近、クリッカーを使ったトレーニング方法が注目を集めるようになってきました。クリッカーとは、片手に握れるほどの小さな箱型のもので、箱に備え付けられた小さなブリキ板を押すと、「カチン」と音が鳴ります。

クリッカーは、あなたと犬とを結ぶコミュニケーションの道具です。クリッカーを鳴らすことによって「そうそう!それでいいんだよ。」「よくできたね。」というあなたの気持ちを犬に伝えことができます。人間が、犬に「よく出来たね」という気持ちを伝えようと思ったとき、「いい子だね」「おりこうさん!」「それでいいんだよ」いろいろな阜サがありますね。そして、その人間の言葉の意味を犬に理解してもらうには時間がかかります。そんなとき、クリッカーを使えば、ほんの数分の予備訓練のあとすぐに、そしてどんなときにでも確実に犬に「よくできたね」「それでいいんだよ」の気持ちを伝えることができます。

クリッカートレーニングとは、このクリッカーを使って犬にさまざまな行動を教えることです。「おすわり」や「ふせ」がもちろん、ボールをとってきたり、新聞を運んだり、いろいろな新しい行動を遊びながら、楽しく教えることができます。

クリッカーを使ってどんなことを教えることができますか?

クリッカートレーニングっておもしろそうですね。具体的にはどんなことができるのでしょうか?

クリッカーを使えば、おすわりやふせなどの基本的な服従訓練はもちろん、飼い主さんの横についてお散歩できるようにトレーニングしたり、お客さんがきたときにマットやハウスの中でおとなしく待っていられるようにすることもできます。

またその他にも、新聞を運んだり、フリスビーをキャッチしたり、ダンスをしたり、工夫次第でいろいろな新しい行動を教えることもできます。

テレビでは、洗濯ものを取り込んだり、肩もみをしたり、縄跳びをしたりする犬を「天才犬」として紹介していますね。クリッカーを使えば、どんなわんちゃんにも、「天才犬」と呼ばれるような行動を教えることができます。「うちの子はおバカさんだから・・」なんて決して言わないでくださいね。犬の学習迫ヘには計り知れないものがあります。どんな子でも、楽しく遊びながらトレーニングしていくうちに、飼い主さん自身がびっくりするようなことを学習していきます。

そして、トレーニングを通じ、犬があなたに注目をし、あなたの言っていることや期待していることに一生懸命応えようとする気持ちが育まれます。

クリッカーを使って教えられないことはありますか?

クリッカーは万狽ネのでしょうか?クリッカーで教えられないことはありますか?

クリッカーは、「○○する」ということを教える道具です。「○○しない」ことを教えることはできません。

例えば、「○○して欲しくないなあ・・」と思うことは、特にやんちゃ盛りのわんちゃんと過ごす飼い主さんなら頻繁にあるでしょう。「ャtァーをガリガリ掘って欲しくないなあ・・」と思ったとき、これをクリッカーで教えることはできるでしょうか?答えは「No」です。「○○しない」ことは教えることができません。

ただし、「ャtァーの上には載らず、ャtァーの下でふせをする」ということならクリッカーを使って教えることができます。クリッカーは、「○○しない」ということは教えることができませんが、して欲しくないことと両立できないような他の行動を教えることによって、結果的にして欲しくない行動をさせないようにすることができます。

これがクリッカーを使ったトレーニングのポイントです。犬のとった行動に対してクリッカーを使って「それでいいんだよ」とたくさん誉めてあげることが基本にあります。して欲しくないことも、その行動に罰を与えたり、叱ったりするのではなく、して欲しくないことをしないですむような行動をトレーニングによって植え付けていきます。クリッカーは叱ることなく犬の行動を望ましい方向へ導く道具です。

クリッカートレーニングが他のトレーニング方法と違うところはどこでしょうか?

うちの子は、クリッカーを使わなくてもとりあえずおすわりやふせはできます。クリッカーを使う利点はどんなところにありますか?クリッカーを使わない他のトレーニングと違う点はどんなところでしょうか?

クリッカートレーニングでは、「○○を教える」という阜サはあまり正確ではありません。「犬が自発的に行った行動をクリッカーを使って誉める」ということの繰り返しです。

「自発的に行動するなら、トレーニングする必要なんてないじゃない!」と思われるかもしれませんね。それでは、おすわりをクリッカーを使って教えることを例に考えてみましょう。

「おすわり」を教えていない状態では、当然あなたが「おすわり」と言っても犬はおすわりしませんね。おすわりしないどころか、あなたに注目することなくあなたを無視してどこかへ行ってしまうかもしれません。でもたまたま座りたくなって犬がおすわりするということならどうでしょう?きっとありますよね。その瞬間を見つけてクリッカーを鳴らしてあげます。「そうそう!それでいいんだよ。」ということを伝えるのです。

この繰り返しで、犬はあなたの前でおすわりをする機会が多くなってきます。あなたの前でおすわりをすればクリッカーが鳴って誉めてもらえるからです。そしたら、犬がおすわりする瞬間に「おすわり」と号令をかけて、クリッカーをならします。この繰り返しによって、犬は「おすわりと言われたらお尻を床に落とせばいいんだな・・」と学習します。

つまり、最初から「おすわりと言われたら、おすわりするんだよ」と完璧な形を教えるのではなく、徐々に、完成形に近づくように導いていくのです。

「それじゃ、フリスビーキャッチや縄跳びは?うちの子はそんなこと自発的にやらないよ。」とおっしゃるでしょう。この場合も犬が自発的にとった行動を誉める、徐々に完成形に導く、ということに変わりありません。ただし、最初からフリスビーキャッチをしたり、縄跳びをしたりする犬はいませんね。これは、「より近い行動を誉める」ということの繰り返しで学習させていきます。フリスビーキャッチであれば、あなたが手ににぎったフリスビーを咥えるところから、縄跳びであれば、ちょっと飛び上がるところから始めます。

クリッカートレーニングの特徴をおわかりいただけたでしょうか?こんなふうにしてトレーニングするとどんな利点があるのでしょうか?以下にまとめてみました。

1. トレーニングが楽しい遊びの時間になります。

トレーニングの時間は犬にとって「何かをやらされる時間」ではなく、自分で自由に行動し、それがたくさん誉められる楽しい時間です。

2. クリッカーを使って覚えたことは忘れにくい、という特徴があります。

人間も、嫌なことはすぐ忘れたいけれど、楽しかったことはいつまでも覚えていますよね。クリッカートレーニングは誉めることの繰り返しなので、叱られたり、強制されて覚えるよりも楽しい記憶として犬の中に長く残ります。

3. 自分から働きかける撫薰フ生き生きした犬に成長します。

クリッカートレーニングでは、間違って怒られたり、「○○してはだめ!」と叱られることがありません。いつも怒られるんじゃないか・・とびくびくしているのではなく、常に飼い主さんの声に耳を傾け、どうすれば誉めてもらえるんだろう・・、何を要求・期待されているんだろう・・と考え、自分から働きかける撫薰フ生き生きした犬に成長します。

4. 犬にストレスがかかりません。

クリッカートレーニングでは、最初から犬に完璧を求めません。徐々に完成形に近づけるよう時間をかけて導きます。そのため犬は、ストレスを感じることなく無理なく学習することができます。

5. 飼い主さん自身が、トレーニングの時間を楽しむことができます。

クリッカートレーニングでは、犬が少しずつ上手にできるようになっていくのを楽しむことができます。犬の上達と、生き生きとした姿に飼い主さん自身が喜びを見出すようになり、そしてそんな飼い主さんの気持ちに敏感なあなたの犬はますますトレーニングが好きになる、という相互作用を生み出します。

うちの子はもう子犬ではないんですけど・・。いくつまでならトレーニング可狽ナすか?

うちの子は、6歳です。もう何か教えるなんて無理ですよね?いくつまでなら、トレーニング可狽ネのでしょうか?

クリッカートレーニングは、いくつになっても可狽ナす。クリッカートレーニングの基本は、犬の持っている学習迫ヘをうまく引き出して、望ましい方向へ導く、ということです。

犬は、人間が意図的に何かを教えなくてもたくさんのことを学習しています。7時になったらフードボールの前で待っていることも、獣医さんに連れて行かれそうなことを察知して椅子の下にもぐりこむことも、学習の結果です。確かに犬も若いうちは好奇心も旺盛で、学習迫ヘに優れています。しかしながら、歳をとったからと言って全く学習しなくなるわけではありません。それは、人間でも一緒ですね。歳をとってもさまざまなことを勉強するし、また勉強することを楽しむこともできます。

その犬の、年齢や性格や好みに合わせて、その子のペースでトレーニングをしましょう。そしてそれが遅々たる歩みであったとしても、少しずつ上手になっていることを心から喜び、誉めてあげください。そのあなたの姿が犬にとって何よりのご褒美であり、トレーニングが犬と一緒に楽しむことのできるかけがえのない時間になります。

トレーニングの時間はどのくらい取ればいいですか?

クリッカートレーニングはどのくらいの時間すればいいのですか?毎日欠かさずやらなければならないのでしょうか?

クリッカーに限らず、トレーニングは、犬の集中力が持続している間に行い、集中力が切れる前に切り上げるのがポイントです。そして犬の集中力は、そんなに長く続きません。5分から10分をめどに、1日に1回、もしくは数回に分けてトレーニングするのがいいでしょう。

例え数日に1回しかトレーニングの時間が取れなかったとしても、トレーニングの価値は助ェにあります。折角の犬と楽しむ時間も、あなたが「今日もやらなくちゃ・・」と義務感にかられていたり、イライラしていたら台無しです。無理をせず、心のゆとりのある時に、楽しみながらトレーニングをしてください。

さあ!始めましょう!

クリッカーも手に入れました!具体的にはどうやってトレーニングすればよいのでしょうか?何から始めればいいのですか?

クリッカートレーニングには、いくつかの大切なルールがあります。このルールをよーく理解して、守った上で、クリッカーを使わないと、クリッカーの「カチン」という音が「よくできたね。」ではない違った意味のものになってしまいます。

ぜひ以下の順に進めてみてください。「うちの子はもうおすわりはできるから」と言わず、クリッカーの使い方と効力を実感しながら次の順にすすめることをお薦めします。そして、何かわからないことがあったら遠慮なくお尋ねください!