魔法使いがやってきた!(1)

犬を上手くしつけるのに大切なこと。それは愛情を持って犬をしつけること。実際に深い愛情を持って犬をしつけた人の体験が元になっているこの連載。犬のしつけに悩んでいる人にぜひ読んで欲しい。

Q.あることをすると犬のストレスが減り、しつけにいい影響を及ぼすと言われていることがあります。それは何?

1. 声かけ
2. おやつ
3. マッサージ
4. その他

魔法使いがやってきた!(1):笑顔の法則(第76号, 2008/1/1)

かつて私の耳元で、こうささやく悪魔がいた。

「犬に飛びついて欲しくないなら、飛びついた瞬間に大きな音を立ててビックリさせるがいい。“犬はいやなことが起きた瞬間の行動をしないように学習する”。これは、立派な心理学の応用なのだ。ワルイ行動はそうやって消してしまうのじゃ」。

私にはどうしてもできなかった・・。大好きなキミをいやな目にあわせるなんて。そんな風に応用しなくちゃいけないなら、もう心理学なんか捨ててやる!

泣きベソの私に、今度は天使が微笑みました。「逆だよ逆。ワルイ行動を消すんじゃなくて、イイ行動を増やすんだ」。

外に行きたいと扉に飛びついているなら、飛びつくのをやめてすわったときに扉をあけてごらん。心理学にはこんな法則があるよ。「犬はうれしいことが起きた瞬間の行動を学習する」。ほら、繰り返すうちにすわるまでの時間が短くなるだろう?「扉が開く」っていううれしいことをごほうびに、飛びつく代わりにすわることを学習する。犬はイイ行動を学習した分だけ、ワルイ行動を起こさなくてもすむんだ。

「たしかにそうだけど。でも、飛びつかないようにするためだったら、すわるまで待つより、罰した方が簡単なんじゃないの?」。そんな疑問でモヤモヤしている私を残して天使は行ってしまいました。

あれから何年たっただろう。「犬はうれしいことが起きた瞬間の行動を学習する」・・この法則は私の宝物になり、あの疑問の答えもちゃんと自分で見つけたよ。「見て!」扉の前でご機嫌にすわるあの子の笑顔。「えらいぞ!」ニッコリ笑って扉を開ける私の笑顔。いやな目に合わせてワルイ行動を消そうとしたときには、決して手に入らないもの、それは「笑顔」。

「いくら犬が飛びつかなくなっても、幸せなのは“イイ子”を手に入れた自分だけ・・そんなんじゃ絶対イヤなんだ!誰が何と言おうと、みんなが一緒に幸せになれることにしか、私は心理学を使いたくないんだ!」。駄々っ子みたいに、いつまでもいつまでもそう叫び続けていたいはずなのに、悪魔に誘惑されると心が揺れる弱い自分がいる。

だから私はこの法則に、自分だけの名前をつけたんだ・・「笑顔の法則」。どう?もう一度、天使は私に微笑んでくれるかな。(つづく)