魔法使いがやってきた!(2)

犬を上手くしつけるのに大切なこと。それは愛情を持って犬をしつけること。実際に深い愛情を持って犬をしつけた人の体験が元になっているこの連載。犬のしつけに悩んでいる人にぜひ読んで欲しい。

Q.あることをすると犬のストレスが減り、しつけにいい影響を及ぼすと言われていることがあります。それは何?

1. 声かけ
2. おやつ
3. マッサージ
4. その他

魔法使いがやってきた!(2):おしゃべり(第77号, 2008/1/11)

その昔、犬と暮らし始めて間もない私の元へ魔法使いがやってきた!

「これは、犬につけると吠えなくなる装置。おひとついかが?」。どうやらそれは、吠えると犬に不快な刺激が与えられるらしい。

「吠えなかったら楽だけど」。迷った挙句、私はついにこう答えた。「とりあえず・・間に合ってます!」

うまくいかないことだらけで、本当は間に合ってなんかいなかったけど。何かにすがってみたい気持ちでいっぱいだったけど。でもわからないことだらけの今の私がそれにすがったら、「何か言いたいことがあるのかな」って気づくことさえできなくなっちゃうんじゃないか・・そんな気がして。

「せっかくなら“犬と話しができる魔法”がいいな」。そう思ったあの日から長い月日が流れたけれど、うちの犬は相変わらずのおしゃべりクンだよ。

手を洗っている私に後ろから音もなく近づいてきて、ふくらはぎに鼻でツン!「うわぁビックリした!一体なぁに?」。返事だけもらうと、満足そうに部屋の奥へと戻っていくんだ。「別に用事はなかったんだけどね」って語ってるみたいな後姿で。

気がつくと扉の前、驚くほどの折り目正しいおすわりでじーっと私を見つめてる。扉の前で訴えてるってことは・・「お庭?」。途端に「それそれ!」とはしゃぎだす。

そんな私たちの“会話”は、「話し、通じてるよね?」とみんなを驚かせるけれど、これは別に魔法じゃない!前足で触ったとき、鼻でつついたとき、じっとこっちを見てるとき・・「なーに?」と返事をしたりほめているうちに、犬は人に気づいて欲しいとき、吠える代わりに鼻や前足で触れたり見つめるようになる。私たちの学習の軌跡。

あのとき「魔法の装置」を手にしていたら、私たちはどうなっていただろう。吠えなくなったかもしれない・・でもそのときには、私に話しかけることまでやめてしまったかもしれないな。愛らしいおしゃべりで私を楽しませてくれるこの子には会えなかったかもしれないな。(つづく)