魔法使いがやってきた!(3)

犬を上手くしつけるのに大切なこと。それは愛情を持って犬をしつけること。実際に深い愛情を持って犬をしつけた人の体験が元になっているこの連載。犬のしつけに悩んでいる人にぜひ読んで欲しい。

Q.あることをすると犬のストレスが減り、しつけにいい影響を及ぼすと言われていることがあります。それは何?

1. 声かけ
2. おやつ
3. マッサージ
4. その他

魔法使いがやってきた!(3):魔法の水(第78号, 2008/1/21)

その昔、我が家に「魔法の水」があった。「犬にかじられると困るものにつけること」。どうやらそれは、犬のキライな苦い味がするらしい。

でもね、なんだかおかしいんだ。買ってきたばかりのハウスをかじってるから、その「水」をつけてみた。たしかにハウスはかじらなくなったけど、その代わりスリッパをかじるんだ。しょうがないからスリッパにもつけてみたら、今度は棚の角をガリガリ・・もうきりがないんだ!

これってヘンだよね?これさえつければ、犬はかじらなくなるんだよね?山のように振りかければ魔力が増すのかな・・。家中苦いものだらけにすれば、魔法が効くのかな・・。

その魔法は、信じようとすればするほど私を苦しめます。「本当にそれでいいのか。人間にとって都合の悪い行動は、消してしまいさえすればそれでいいのか。・・なんだかもう疲れちゃったな。かじっているのを見つけては、魔法の水を振りかけに駆けつける最近の私は、キミの“ワルイところ探し”ばっかりだ」。

「えいっ、やめたやめた」。張り詰めていたものがついにプツンと切れた!犬は硬いものを噛んで生きてきた動物なんだ。噛んでどこが悪い!うちの子は、ワルイ子でも“異常”でもないんだぞ!

かじってるってことは、そうする必要があるってことなんだ。満足いくまで噛んでもかまわないものを噛めばいい。このガムなんてどう?・・今度はクッション?それならこのぬいぐるみにしてくれない?

正直なところ、なんでそんなに噛みたいのか、私にはサッパリわからないケド。でも、そんな“理解できない趣味”も丸ごと引き受けてみようと覚悟を決めたら、目の前が急に開けたんだ。まるで魔法にかけられたように。

あの「水」?もう捨てたよ。「キミが生きていくのに、この家に足りないものは何?」キミの声を聞く耳と目と、差し伸べるこの手があればもう助ェ。ひどいことをした私なのに、今じゃ苦い味のしたことがあるハウスを嫌がることもなく、スリッパだって自信満々にくわえて私へ届けてくれる。そんなキミの明るさに私は救われたんだ。(おわり)