足したり引いたり(1)

犬を上手くしつけるのに大切なこと。それは愛情を持って犬をしつけること。実際に深い愛情を持って犬をしつけた人の体験が元になっているこの連載。犬のしつけに悩んでいる人にぜひ読んで欲しい。

Q.あることをすると犬のストレスが減り、しつけにいい影響を及ぼすと言われていることがあります。それは何?

1. 声かけ
2. おやつ
3. マッサージ
4. その他

足したり引いたり(1):たぶんネ・・(第109号, 2009/3/1)

今となっては「珍騒動」以外の何ものでもないのだけれど。

たしかそれは4年前のお正月のこと。突然、ウチの犬がだっこを嫌がるようになったのです。いつもなら、ひざをポンとたたいて「だっこ♪」と言えば、ピョンと自分から体を預けてくるあの子が、抱かれることを拒絶するようにすわりこみ、顔をそむけ、小さくうずくまってしまう・・。

「大変!! 犬の様子がヘンなの」
「どうしたどうした?」
「だっこしようとすると元気がなくなるの」
「触られると痛いのかな・・」
「腰? 腰でも痛めたか?!」
「いや、お尻かも。肛門ただれてない?」
「ちょっと待て。シッポの可柏ォも捨てきれないぞ」

犬を囲んで口々に仮説を唱える人間たち。しかし肝心のカレが何も語ってくれない以上、確かなことはわからない・・。だから考えた!

『ここは足し算だ!』

「くるくる~♪」場違いなほどの陽気さで声をかけたのは私。するとどうでしょう。驚いたことに犬は、何事もなかったようにスクッと立ち上がり、輪をかくように回って見せたではありませんか! しかも「ほめて~!」としっぽをフリフリご機嫌な笑顔のオマケつき。

「それじゃこれは?」私は座布団の上に犬を誘い、恐る恐る言ってみた・・「ごろぉ~ん♪」。座布団の上で器用に体をくねらせ1回転! 「上手でしょ?」起き上がったあの子の顔は、拍子抜けするほどの自信満々。

どこか痛いところがあるのなら、「だっこ」を拒絶したように「くるくる」も「ごろ~ん」もしないに違いない。「うん、ひとつわかったぞ。どこかが痛いわけではなさそうだ」。それなら一体何なのか?!

『今度は引き算だ!』

フリース素材の上着を脱ぐ。ハウスや犬がよくすわるャtァーから化繊の敷物を取り除く。私はカレの周りから「静電気」の起こる要因を引き算していったのです。この結果、だっこを嫌がらなくなったなら、私たちと接触するときに起こる静電気の「バチン」が怖くてだっこを嫌がっていたことになります。

・・え?それでどうだったのかって? どうやら「静電気」だったみたいなの。たぶんネ、たぶん。犬に聞いてみたワケじゃないから、あくまでも「たぶん」なんだけど。私たちの周りはいつもこんな「たぶん」でいっぱいで、それでもその「不確かなたぶん」を、少しでも「確からしいたぶん」にしたいから、私は今日も犬を取り巻く環境から、いろいろな要因を足したり引いたり・・。

それにしてもなぁ、この一件が数年後、あんな形で生かされることになるなんてなぁ・・。(つづく)

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