犬を上手くしつけるのに大切なこと。それは愛情を持って犬をしつけること。実際に深い愛情を持って犬をしつけた人の体験が元になっているこの連載。犬のしつけに悩んでいる人にぜひ読んで欲しい。
1. 声かけ
2. おやつ
3. マッサージ
4. その他
私は板ばさみでした。
ウチの犬は、子犬の頃からとにかく「要求」の多い子でした。登ったャtァーから降りれないと吠え、持っているものが欲しいとむしゃぶりつき、かまって欲しいと腰を振ってマウンティングする。私の手足はいつでも傷だらけでした。
このままじゃいけないことはわかっていたのです。でも、私はどうしてもそれをやめさせる気になれませんでした。だって、それに成功したとき、この子はどうなるのか。言いたいことがあっても、ただだまって私からの「指示」を待っている受身な犬になってしまうのではないか・・。
答えは意外なところに転がっていました。
心理学の教科書を読みながら、頭の中で「3つの箱」を作っていたときでした。赤ちゃんが泣くとお母さんがあやす・・「赤ちゃんは、そうやってお母さんにはたらきかけるようになるんだな」。そしてこの先! 赤ちゃんが言葉を発するようになったとき、それはどう変化するのか?! 泣くという行為は「ママ」という言葉に取って代わるようになり、母親がそれに応えることで、子供は積極的に「ママママ」と言うようになる・・「人はこうして人との関わり方を学んでいるんだな!」。
それは、犬と重ね合わせて考えることのできないシーンのはずでした。しかし、その3つの箱の「変形パターン」に私は目を奪われたのです。
かまって欲しい >> マウンティング >> 注目
かまって欲しい >> 前足を乗せる >> 注目
「真ん中の箱が、ほかの行動に取って変わればいいんだ」。全面的にやめさせるか、そのまま私が痛いのをガマンし続けるか、選択肢がふたつしかなかったから、その板ばさみで一歩も動けずにいたのです。「今はまだ吠えたり噛んだりするばかりのキミも、できることが増えるにつれて、別の手段で私とおしゃべりできるようになればいい・・」。
覚えたての「お手」を少しだけ変形させて、前足で「ねぇねぇ」と私に話しかけるようにおしえたあの日からもう10年。今でも私は日に何度も、その肉球のぬくもりをひざに、腕に、肩に感じてこう答えます。「な~に?」「どうしたの?」「今行くよ」「ちょっと待ってて」「今忙しいの!あ・と・で」。
それは「要求」なんかじゃない。私たちの日常に当たり前のように存在している「対話」。「ねぇねぇフミちゃん・・」その短い前足を一生懸命に私の方へ延ばすキミの姿を、「要求」なんて一方的な響き漂う言葉でどうして阜サできるだろう。(つづく)