子犬のしつけで忘れられがちなのが「社会化」である。社会性豊に犬を育てることのメリットとその方法を独自の取材のお届けする。
1. 無視する
2. 音をさせる
3. おやつをあげる
4. その他
犬には「社会化期」という時期があります。3 週から 12 週ごろと言われています。
思えば犬とは不思議な動物ですね。あなたと犬とは'種'の異なるもの同士ですが、ひとつ屋根の下、家族として、そして、同じ群れの仲間として仲良く暮らしているのです。どうしてそのようなことが可能なのでしょうか?
その答えの鍵が
「社会化期」にあります。
犬は、社会化期に、自分の周りにいる人間や動物を仲間として認識するようになります。つまり犬は、子犬のうちから(社会化期に)人間と一緒に暮らすことによって、'種'が異なるにも関わらず、人間を仲間だと認識することができるようになるのです。
普通は、'種'の異なる人間を仲間だと認識する過程が、家庭犬にとっての社会化だと言えます。しかしながら、早くから親や兄弟たちと別れて人間と生活を共にするようになった犬の中には、犬を仲間だと認識する機会に恵まれず、その機会を人間が社会化期に意図的に作ってあげなければならないことがあります。とても奇妙なことですが、その機会がないままに大きくなってしまった犬の中には、仲間であるはずの犬とどのように接すればいいのかわからず、接触を拒んだり、吠えたり、'犬見知り'をする犬になってしまうことがあるのです。
犬の目には、私たちが暮らす環境はどのように映っているのでしょうか?
家の中には、ャtァーがあったり、たくさんの家具がありますね。窓にはひらひらカーテンが揺れています。絨毯や畳の感触は、犬にはなじみのないものかもしれません。テレビやラジオからは耳慣れない音がするし、掃除機は、大きな音を立てて動き周りますね・・。どれもこれも、野生の犬であれば、一生お目にかからないようなものばかりです。
家を一歩出れば、土や草の場所ばかりでなくアスファルトの道もあります。猫やカラスもいるでしょう。車や自転車、バイクも走るし、ときには、電車や車に乗って出かけることもありますね。空からは、雨が降ってくることも、雷が落ちてくることもあります。そして何より、人間に囲まれて生活する以上、男の人、女の人、子ども、お年寄り、めがねをかけている人、帽子をかぶっている人、いろいろな人に出会うことになります。
犬が人間の社会で生きていくためには、いろいろな経験を通して、このような 犬にとって見慣れないものたち' に慣れる必要があります。そして、周りの環境に対する順応性が高い子犬の時期は、その絶好の時期なのです。
子犬の時期にこのような機会に恵まれないと、見たことのないもの、聞いたことのない音、経験したことのない感覚・・など、未知の出来事に、成犬になった後でたくさん遭遇することになります。そして、それらの出来事に過敏に反応し、吠えたり、怖がって威嚇をしやすい子になるかもしれません。
子犬があなたの家庭にやってきて、ワクチン接種を終えたら、できるだけ早い時期に、お散歩に出かけましょう!
あなたの犬を'犬見知りクン'にしないために、できるだけ穏やかな性格の犬とお友達になって、遊ばせてもらうとよいですね。他の犬と楽しく遊ぶ経験を重ね、上手に'犬とのお付き合い'ができるようになることは、犬の生活を豊かにするだけでなく、知らない犬に過敏に反応し、吠えたり、威嚇したりするような問題行動を防ぐことにも通じます。
お散歩に出かけたら、近所の方に子犬を見てもらいましょう。男の人、女の人、めがねをかけている人・・いろいろな人に優しく撫でてもらいましょう。いろいろな人と接し、楽しい経験を積むことで、人見知りをしにくい犬になるでしょう。
そして、楽しく散歩をしながら、'犬にとって見慣れないものたち' を見たり、接触したりする機会をたくさん作ってあげると良いですね。いろいろな経験をし、さまざまな種類の刺激に触れることは、これからの生活の中で遭遇するどんなことにも、強いストレスを感じることなく順応していくための基盤になります。
子犬の人生はまだ始まったばかりですね。子犬の時からいろいろな経験をさせてあげることは、これからずっと続く犬の生活を豊かにしていくことに通じるのです。
子犬は、順応性も高く、豊かな感受性でいろいろなものを吸収していきますね。だからこそ、さまざまな刺激に順応していくことができます。しかしその一方で、この時期に体験した辛い出来事が犬の中に強く印象づけられることもあります。
子犬にさまざまななものを見たり、体験させたりするときには、それが犬にとって楽しい体験になるように気を配ってあげなければなりません。それが、その子犬にとって、あまりに強すぎる刺激や、恐怖を感じるような体験になってしまった場合には、どうなるでしょうか?犬が始めて体験した '犬にとって見慣れないものたち' は、犬にとって、ただ恐ろしく、決して近寄ってはいけないもの・・として刻みこまれてしまうかもしれません。これでは逆効果ですね。
犬に新しい経験をさせてあげるときには、犬の様子をよく観察しましょう。怖がっているようなときには、無理に近づけたりせず、できるだけ楽しい雰囲気で、励ましながら、徐々に近づくようにするといいでしょう。今日が駄目でも、また明日、そして、その次の日があります。決して焦らず、犬のペースに合わせてあげることが大切です。
犬と接触させるときには、できるだけ穏やかな性格の犬に協力してもらい、徐々に慣らしていくといいでしょう。
近所の方に子犬を見てもらうときには、子犬が驚かないように、静かに、優しく、下の方から手を差し出してもらうようにお願いしましょう。
大きな音が嫌いな子には、できるだけ静かなお散歩コースを選んであげ、徐々に、車やバイクなど、嫌いな音に慣らしていくといいでしょう。
お散歩デビューを果たした子犬にとって、外の世界は、未知との遭遇ですね。最初は、そわそわ気が散って、お散歩どことではないかもしれません。あるいは、その場に固まってしまって、全く動かなくなってしまう子もいるでしょう。
子犬に、外の世界によい印象を抱いてもらえるような楽しいお散歩デビューを果たすにはどうすればいいのでしょうか?
- できるだけスムーズに歩くことができるお散歩コースを考えよう!
外の世界には、小さな子犬にとって、びっくりしたり、恐怖に感じるようなことがたくさんありますね。車の音が嫌いな子、大きな犬がいるお宅の前でおじけづく子、階段の手前で立ち止まってしまう子・・。苦手なものがきっとあるでしょう。
まず最初は、できるだけスムーズに歩くことができるようなコースを工夫してお散歩してみましょう。そして、徐々に、いろいろな経験ができるように、お散歩の範囲を広げていけばよいのです。
- お散歩の途中で、楽しみを作ろう!
お散歩には、おもちゃや、ご褒美になるような何かおいしいものなど、あなたの犬が大好きなものを持っていきましょう。ただ、並んで歩くだけでなく、公園などで、おもちゃを使って遊んだり、話かけたり、体を撫でてあげたり、ゆったりと楽しい時間を過ごすことができるようにするといいでしょう。
- 怖がっても、知らん顔をしよう!
犬が怖がっている素振りを見せていると、ついつい立ち止まって振り返り「大丈夫だよ」と声をかけたり、撫でてあげたり、あるいは抱っこしてあげたくなりますね。しかし、そのことで犬は、怖いときや歩きたくないときには、歩かないよ!と頑固に踏ん張ったり、飼い主さんに抱っこをねだったり、飼い主さんのことを心配そうに見つめたりすれば、飼い主さんが立ち止まって自分を振り返り、声をかけ、運が良ければ抱っこしてくれるんだな・・と、学習してしまいます。そしてその結果、ますます、歩かないよ!と踏ん張ったり、抱っこをねだったりするようになるのです。
あまりひどく怖がっているときには、翌日から、別のお散歩コースを考えてあげればいいのです。一旦お散歩に出かけたら、多少犬が怖がっていても、「さあ!行こう!」と楽しげに、元気よく声をかけ、歩くように促しましょう。キューキュー音のするおもちゃを鳴らしながら、歩くように誘ってあげてもいいでしょう。歩き始めたときに「いい子だね!」と明るく声をかけ、ご褒美を口に入れてあげてもいいでしょう。そうすることで、怖がっていても何もいいことは起こらないんだな・・ということだけでなく、飼い主さんについていくと、たくさん誉めてもらえるんだな!楽しい気分になるんだな!と感じてもらえるようになるのです。
犬はとても賢い動物です。ただ食事をもらい、散歩をし、昼寝をするだけでは、精神的に満足をして生活することはできないのです。人間が、ただ生きていくだけではなく、働いたり、人と話をしたり、買い物をしたり、遊んだり、勉強したり・・さまざまな刺激を受けることによって、精神的にも満ち足りた生活をしていくことができるのと、程度の差こそあれ、同じことですね。
毎日お散歩をし、他の犬と遊んだり、近所の人に撫でてもらったり、広い公園で走り回ったり、ボールやフリスビーを追いかけたり・・というような刺激の多い生活をすることで始めて、犬は肉体的だけでなく、精神的にも満足した豊かな生活を送ることができます。
もし満足できないと、どうなるでしょうか?刺激を求め、精神的に満足をしたい、という欲求を満たすために、いたずらをしたり、動くものに飛びついたり、道行く人に吠えたり、人間にとって望ましくない行動を起こすかもしれません。
毎日楽しくお散歩をし、精神的に満足することができるような刺激的な生活を送ることは、人間の環境に慣れ、社会化を促進する、ということだけではなく、いたずらや、無駄吠えなどの、問題行動の蘭hにも通じる、犬の'しつけ'にとってとても大切なことなのです。