クリッカー予備トレーニング

クリッカーなるものをご存知だろうか。心理学を元とするこのツールは、犬とのコミュニケーションを可能にするという。果たして何ができるのか。犬と人との未来に何が待ち受けているのか。最新の「しつけの科学」をレポートしよう。

Q.あることをすると犬のストレスが減り、しつけにいい影響を及ぼすと言われていることがあります。それは何?

1. 声かけ
2. おやつ
3. マッサージ
4. その他

準備するもの

トレーニングを始める前に、必要なものを揃えましょう!

1. クリッカー
2. ご褒美

犬の好きなものを用意します。食べるものでもおもちゃでも高「ませんが、食べるものをお薦めします。できるだけ、

 - 少しずつ食べられるもの
- 早く食べられるもの
- できるだけ好きなもの

が望ましいと言えます。

例えば、やわらかいジャーキーや、チーズ、野菜のスティック、ささみや、レバーをゆがいたものがよいでしょう。

逆に、硬いガムや、硬いジャーキー、小さくすることが難しい乾燥させてある砂肝やクッキーなどはあまり向いていません。

トレーニングの前には、犬が、一口で口に入れ、すぐに飲み込めるくらい、0.5 から、1センチ角くらいにちぎっておきます。

*** 注意 ***

クリッカートレーニングは楽しくて、ついついたくさんのご褒美を犬にあげてしまいます。トレーニング中に与えたカロリー分は、普段の食事を減らすなどして、太りすぎや健康管理に助ェ注意してあげましょう!

予備トレーニング!クリッカーの音を犬に教える・・

準備ができたら、いよいよクリッカーの音を犬に教えます。

1.

左手にクリッカー、右手にご褒美を小さくちぎったものを持ちます。
2. クリッカーを「カチン!」と鳴らして、すぐにご褒美をあなたの手から与えます。クリッカーとご褒美の間隔は、短ければ短いほど望ましいといえます。クリッカーを鳴らしたらすぐに(ほとんど同時に)、ご褒美を与えましょう。
3. これを20回から、30回ほど繰り返し、クリッカーの「カチン!」の音とご褒美が、犬の中で結びつくようにします。

ここまでできたら!犬の中で、クリッカーの「カチン!」の音とご褒美が結びついたかどうかを確認するために、以下を試してみましょう!

1. 犬があなたに注目していないときにクリッカーを「カチン」と1回ならしてみます。
2. 犬は、あなたに注目するでしょうか?注目すれば、クリッカーの「カチン!」の音とご褒美がきちんと結びついています。注目しなければ、もう一度、「ご褒美を食べたら、クリッカーを鳴らす」を繰り返し、結びつきができるまで繰り返します。

*** 注意 ***

1. クリッカーの「カチン!」の音とご褒美が、犬の中で結びつくまでは、次に進んではいけません!

クリッカーの「カチン!」の音とご褒美の結びつきは、クリッカートレーニングの基本であり、「前提」とも言えるものです。これ以降でご紹介するトレーニングは、必ず、結びつきが完成してからにしてくださいね。

2. うちの子は、クリッカーの音にびっくりしてしまうんですが・・・。

大きな音が苦手な子の中には、最初、クリッカーの音を嫌がる子もいます。そういう場合には、最初、ポケットの中でクリッカーを鳴らすなど、大きな音を立てないようにして、「ご褒美をあげながらクリッカーを鳴らす」を繰り返します。予備訓練に数日の時間をかけて、徐々に、クリッカーの音にも慣らすことにより、クリッカーの音がご褒美と結びつき、最初は嫌いだった「カチン」という音も、好きな音変わっていきます。

3. クリッカーの「カチン!」の音とご褒美が、犬の中で結びいたら、クリッカーはむやみに鳴らしてはいけません。

「カチン!」の音と、ご褒美が結びつくということは、「カチン!」の音自身が、ご褒美になったことになります。そして、「カチン!」は「そうそう!それでいいんだよ!」という合図です。もしあなたが不用意に「カチン!」と鳴らしたときに、犬がごみ箱をあさっていたりしたら・・?そうです。してはいけないことに対して「そうそう!それでいいんだよ!」と犬に教えてあげたことになります。「カチン!」の音は慎重に!むやみに鳴らさないようにしましょう!

”アイコンタクト”を教えてみましょう!

クリッカーの音が、ご褒美に結びついたら、トレーニングを始めましょう!一番最初に、「アイコンタクト」をトレーニングすることをお薦めします。アイコンタクトとは、犬があなたの目をきちんと見めることです。そして、アイコンタクトが上手にできるようなると、飼い主であるあなたに犬がちゃんと注目することができるようになります。そしてこれは、トレーニングを進めていく上で大切なことであるだけでなく、犬と一緒に生活し、あなたが犬のリーダーになるためにももっとも大切なことです。

1.

左手にクリッカー、右手に小さくちぎったご褒美を持ち、椅子にすわります。
2.

犬と目があったら、「カチン!」とクリッカーを鳴らしましょう。その後で、ご褒美を与えます。
3. この繰り返しによってあなたの犬は頻繁にあなたの目を見つめ、注目するようになります。

*** 注意 ***

これ以降、トレーニングを行う際には、犬が上手にできたとき「そうそう!それでいいんだよ!」というあなたの気持ちを犬に伝えるために上手にできた瞬間に「カチン!」とクリッカーを鳴らします。このときには、クリッカーを鳴らしてから、ご褒美をあげるまでの間に時間が空いても高「ません。

しかし、クリッカーを鳴らしたら、その都度ご褒美をあげなければなりません。クリッカーを鳴らしたのに、ご褒美をあげることを省略してしまったり、クリッカーを3度ならして、まとめて後で3回分のご褒美をあげる、ということもやってはいけません。

クリッカートレーニングで最も大切なのは、「カチン!」とクリッカーを鳴らすタイミングです。「そうそう!それでいいんだよ!」という合図は、望ましいことをしている間に出さなければなりません。人間なら、アイコンタクトが済んだ後に、「今のは、目があったところがよかったんだよ・・」と伝えられますが、犬にはそんな説明できませんね。犬に「それでいいんだよ」という気持ちを伝えるためには、アイコンタクトをしている間、アイコンタクトをし始めた瞬間に「カチン!」とクリッカーを鳴らさなければなりません。

名前を呼ばれたらすぐに反応する子にしましょう!

アイコンタクトができるようになったら、「名前に対して敏感に反応する」トレーニングをすることをお薦めします。「ポチ」と呼んだら、あなたの元にかけより「なーに?」とアイコンタクトして欲しいですよね。しかし以外と、何か他のことに夢中になっていたりすると知らん顔してしまったり、のったりのったりあなたのもとにやってきたりすることもあるのではないでしょうか?名前に対する反応をよくすることは、例えば、させて欲しくないことをストップさせたり、危ない目合いそうになっているときに、あなたの方へ注目させ、危険を回避させるということさえ可狽ノします。

1. 左手にクリッカー、右手に小さくちぎったご褒美を持ちます。
2. 犬があなたに注目していないときに、犬の名前を呼んであげてください。
3. 犬があなたの方を向いたら、「カチン!」とクリッカーを鳴らしましょう。その後で、ご褒美を与えます。

もう一歩進んでみましょう・・

犬が、名前を呼ばれてあなたに注目するようになったら・・・

- 犬があなたの方を向き、あなたの元へ近寄ったら・・「カチン!」
- 犬があなたの方を向き、あなたの元へ近寄って、アイコンタクトしたら・・「カチン!」
- 犬があなたの方を向き、あなたの元へ走ってきたら・・「カチン!」
- 犬があなたの方を向き、あなたの元へ走ってきて、アイコンタクトしたら・・「カチン!」
- 犬があなたの方を向き、あなたの元へ走ってきて、アイコンタクトして、おすわりしたら・・「カチン!」

というように、少しずつ、レベルをあげていくことができます。

最初から、名前を呼ばれたら、すぐに飼い主さんのところにかけより、傍らにおすわりして、アイコンタクトをする、ということを教えるのは大変なことですね。最初から完璧を求めることは、実現が難しいだけでなく、どうしてもうまくいかないことに苛立ってしまって、トレーニングが「犬と一緒に楽しむ時間」ではなく、「犬になんとか言うことを聞かせる時間」に変身してしまいます。これでは、犬もトレーニングが嫌いになってしまいます。もしかしたら、名前を呼ばれることも、嫌なことと結びついて学習してしまうかもしれません。

これでは困りますね。トレーニングは、犬にとって何より楽しい時間であり、アイコンタクトや名前を呼ばれること、おすわりやふせなど、トレーニングによって覚えたことは、犬にとって楽しくて、何度でもやってみたい、と思うことであることが望ましいのです。

名前を呼ばれてあなたを振り返るようになったら、少しずつ、レベルをあげていってください。「犬があなたの方を向き、あなたの元へ走ってきて、アイコンタクトして、おすわりしたら・・」というレベルに達するまでには、少しずつレベルをあげながら、何日間も時間をたっぷりかけて、トレーニングする必要があります。少しずつレベルをあげていくうちに、いつのまにか、飼い主さん自身がびっくりするほど、犬はいろいろなことを学習します。