犬を上手くしつけるのに大切なこと。それは愛情を持って犬をしつけること。実際に深い愛情を持って犬をしつけた人の体験が元になっているこの連載。犬のしつけに悩んでいる人にぜひ読んで欲しい。
1. 声かけ
2. おやつ
3. マッサージ
4. その他
「え?“はんぶんこ”にしては小さすぎる?いや・・ほら、私とキミとじゃ体の大きさが違うからさ、このくらいでちょうど半分だと思うの」。
庭で色づいたイチゴを食べるのは、まず私。そして、ヘタにほんのわずかな実を残し「一緒に食べよう!はい、はんぶんこ」と残りを犬に。この「はんぶんこ」の不公平さに犬が気づくことがあったなら、私はそう言い訳するに違いありません!
ある日、私はおもしろい光景を目にしました。実の部分だけを食べ、残ったヘタを「ペッ」と口から出したのです。「チャンス!小さな物を口から出せるように練習しよう」。偶然にでもヘタを出したら「すごい!それじゃもうひとつ」とごほうびに新しいイチゴを「はんぶんこ」。私の差し出す手の上にヘタを出す確率は、少しずつあがっていきました。
「うまく出せそう?がんばれ!」・・長い舌をグルグル動かしながら懸命にヘタを出そうとする姿を見守るとき、私はこの子の未来を占います。「うまく出せたら、いつか本当に危険なものを口に入れたとき、この子は救われる。もし出せなかったら・・」。
「危険なものを口にしたときにも、こんな風に出せますように」。決してやって来て欲しくない日のために、私たちがしてきた数え切れないくらいの「はんぶんこ」。それはうちの犬が台所でモグモグと口を動かしていたあの日、いつものように手を差し出す冷静さを私に与えてくれました。そしてそれが私の落したガラスのかけらだったことに驚くよりも前に、小さなガラス片を握り締め、冷蔵庫に向かい大好きなキャベツの葉をちぎってあげたのです。危ないもの落としてままにしてゴメン、そして「ありがとう」・・まず犬にそう言いたかった。
本当にうれしいよ。キミが口から出すことを学習してくれて。そして私も、キミが変わっていったのと同じだけの時間をかけて、「それはできて当然のことじゃない」そう思える自分になれて。キミのおかげで大事なことに気づけたことが、私は何よりうれしいんだ。(おわり)