犬を上手くしつけるのに大切なこと。それは愛情を持って犬をしつけること。実際に深い愛情を持って犬をしつけた人の体験が元になっているこの連載。犬のしつけに悩んでいる人にぜひ読んで欲しい。
1. 声かけ
2. おやつ
3. マッサージ
4. その他
何も変わっていないはずなのに、犬の姿が違って見える・・私にはそんな忘れられない瞬間があります。
ひとつ。私がごほうびをあげなくたって、犬はうれしいと感じることのすべてを“ごほうび”に、自分で学習しているんだと気づいた瞬間。
もうひとつ。犬が行動を起こすきっかけは、私が犬に言う「おいで」「おすわり」・・いわゆる“指示”だけではないと気づいた瞬間。
たとえば、ゴハン皿の音がすると走ってくる。たとえば、大好きな公園の前まで来ると早足になる。たとえば、手をグーにしてると「何か握ってる?」と匂いを嗅ぎに来る・・。
音のしるし、場所のしるし、人間がどんなポーズをしているかのしるし。犬は、いつ、何をきっかけに何をすればいいのか「しるし」を探しながら行動している。そして、私が犬に言う「おいで」や「おすわり」は、そのしるしのひとつに過ぎないんだ・・。「私は犬に指示を与える優位な存在」そう思っていた、いや、そうでなければならないと思っていた私の考えが、根底からくつがえされた瞬間でした。
私は別に「犬に指示する存在」じゃなくていい。「犬より優位な存在」じゃなくていい。私はただ、いつでもキミの一番近くで、キミが“しるし”を見つけて行動できたとき、うんと楽しいごほうびがもたらされ、それが学習されていくように、さりげなく演出し続ける存在でいられればそれでいい・・。
私と犬との生活が、またひとつ大きく広がりました。犬が好きなものは何でも“ごほうび”なんだと気づいたときからほめる手段が無限に広がったように、「この行動は、この“しるし”で起こると便利だな、安全だな、楽しいな」と、いろいろなしるしを使って犬に合図を送れるようになったのです。犬にとってわかりやすい「しるし」。ごほうびが待ってるワクワクする「しるし」。そんな「しるし」でいっぱいの毎日にしてあげよう。私は楽しくてたまらなくなりました。(つづく)